2013年11月26日火曜日

逆に聞きたい。この法案に賛成している人の意見を。

皆様お久しぶりです。弁護士の渡部です。

今日,衆院国家安全保障特別委員会で,「特定秘密保護法案」が賛成多数で可決されました。
この法案に関しては,日弁連はもちろん,国際ペンも「ヤバいんじゃないか(意訳)」と言っており,有識者会議等でもこの法案に賛成している人は,私の知る限り見たことありません。

この法案の問題点(=ヤバさ)に関しては,関係各所がいろいろ書いているので,それを見たらいいと思います。
一応,リンクフリーで分かりやすいから日弁連のページを貼っておきます。
【日本弁護士連合会|Japan Federation of Associations:秘密保護法とは?】
http://www.nichibenren.or.jp/activity/human/secret/about.html

さて,今日私が言いたかったことはこれで全てなんですけど,それだとあまりに淡白な更新になる,すごい久しぶりにブログを更新する気持ちになったのにもう冷めた,さてどうしたものかと考えていたところ,私はずっと気になっていたことを思い出しました。


そう言えば,この法案,なんかみんなヤバさが伝わってないんじゃないか?と。



いろいろな報道で「知る権利が害される!」とか,「権力の集中を生んでしまう!」とか叫ばれていますけど,いや,それは確かにそうであって,我々市民に対しても罰則が規定されているから他人事ではないのだけど,なんか結局のところで市民の皆さんと物書きとかの皆さんとの間で温度差ありませんか,ということです。なんで温度差あるんだろう,やっぱり他人事だと思っちゃうのかな,どうしようかな,どうしたらいいのかな。

私が何を言いたいかというと,知る権利云々はもちろんそうなんですけど,それ以前に,「よくこんな法案考えたなお前は他にやることがあるだろう」ということです。
皆さんが選んだ国会議員がこんなことやってますよというお知らせ回にしたいと思います。

よし!そうだ,今日は条文を見よう!

法律(法案)を学ぶ上で一番大事なのは条文です。特定秘密保護法案は,まだ参議院で可決されてないので,当然逐条解説なんてありません。そこで,今日は皆さん,私と一緒に法案を頭から見て行きましょう。

ここでブラウザバックしようとした人,お待ち下さい。
分かっています。分かっていますとも。そんなしちめんどくさいことしていたら読者が離れて行くことは分かっています。
そんな皆さんのために,今日は,私が,特定秘密保護法案を意訳したいと思います。
小難しい条文を噛み砕きます。皆さん,一緒に与党の方の法案を見て行きましょう。

注意1:意訳部分は全て青字にしております。青地部分は全て筆者の独自の見解ですから鵜呑みにしないで下さい。

注意2:特定秘密保護法案全文は,東京新聞さんのサイトを見ました。ただ,リンクフリーかどうか分からなかったので,リンクは貼りません。各自ご参照下さい。


(目的)
第1条 この法律は,特に秘密にしておきたい日本の安全保障に関する情報を漏れないようにすることを目的とする。

なんか内緒にしたいらしいです。分かります。国だって,隠したいことありますよね。

(定義)
第2条 省略

いちいち定義を説明するのがめんどくさいだけです。読む方もめんどくさいでしょ?

(特定秘密の指定等)
第3条 行政機関の長は,「うわやばいこれ漏れたら大変」ってやつを「特定秘密」っていうのにすることができる。

行政機関の長が指定すると「特定秘密」になるらしです。なお,第2項とか第3項とかありますけど長くなるから省略します。

(指定の有効期間及び解除)
第4条 さっきの指定は5年以内が有効期間。延長もできるよ!

ついに条文全てが意訳になりました。あまり気にしていません。

(特定秘密の保護措置)
第5条 行政機関の長は,なんだかんだ手続はあるけど,「特定秘密」を取り扱う人を自分で決められるよ!

完全に仲良しこよしの出来レースじゃねーか。
秘密だからね。秘密は他人に知られたくないしね。

(我が国の安全保障上の必要による特定秘密の提供)
第6条 特定秘密を保有する行政機関の長は,必要だと思ったら他の行政機関に特定秘密を教えたりするよ!(逆に言えば,嫌だと思ったら絶対に秘密にするよ!)

なんで行政機関同士の間に秘密があるんだよ。
縦割行政。

第7条 警察庁長官は,警察庁が保有する特定秘密について,しょーがねーなーと思ったときは特定秘密を各都道府県の警察に情報提供してあげるよ。

事件は会議室で起きているんじゃない!現場で起きているんだ!
仲良くしてよ,警察。

第8条 特定秘密を保有する行政機関の長は,しょーがねーなーと思ったときは,「適合事業者」っていう自分達が認めた事業者にだけ情報提供してあげるよ。

だから(以下略

第9条 特定秘密を保有する行政機関の長は,しょーがねーなーと思ったときは,外国にも情報提供するよ。

他所でやれ。

(その他公益上の必要による特定秘密の提供)
第10条 行政機関の長は,基本的に特定秘密を提供しないけど,もうほんとにバラされないって思ったときは,開示してやらないこともない。

完全にそっちサイドの都合だけで決めてるよね。こっち(国民)サイドの都合無視だよね。よくそれで国民の代表者と(以下略

第11条 特定秘密の取扱い業務は,信頼できる適正評価を受けた人だけが取り扱えるよ。但し,もちろん,内閣総理大臣等は別だ。

適正評価ってなんだ?

第12条 適正評価は,行政機関の長がするよ!こっちが決めるよ!こっちで決めとくよ!

あ,そうですか。

(適正評価の結果等の通知)
第13条 行政機関の長は,適正評価を実施したときは,その結果を評価対象者に対し通知したりする。

あ,通知して教えてくれるんすか。ありがとうございます。

(行政機関の長に対する苦情の申出等)
第14条 評価対象者は,(中略)適正評価について,(中略)行政機関の長に対し,苦情の申出をすることができる。
2 行政機関の長は,前項の苦情の申出を受けたときは,これを誠実に処理し,処理の結果を苦情の申出をした者に通知するものとする。
3 評価対象者は,第1項の苦情の申出をしたことを理由として,不利益な取扱いを受けない。

注意していただきたいんですけど,この条文,まさかの「意訳なし」です。
法律の文言で「苦情」って初めて見た(笑)
↑注意:一番下に追記あり。

たぶん秘密だから「不服申立て」とかの手続を予定していないんでしょうね。クレームお待ちしてます!みたいな。しかも「不利益な取扱いを受けない。」とか明文にしているところから察するに,たぶん不利益な取扱いするつもり満々です。

(警察本部長による適正評価の実施)
第15条 警察でも同じようなもんだよ!

もう驚かない。

(適正評価に関する個人情報の利用及び提供の制限)
第16条 行政機関の長及び警察本部長は,特定秘密をむやみやたらに悪用したらダメ。

さぁ,当たり前のことでそろそろツッコミのバリエーションが無くなってきました。

(権限又は事務の委任)
第17条 省略

(特定秘密の指定等の運用基準)
第18条 政府は,特定秘密の指定に関し,統一的な運用を図るための基準を定める者とする。

たぶんその運用も特定秘密の保護のためにボヤボヤにぼかされるんだと思います本当にありがとうございました。

2 政府は,前項の基準を定め,又はこれを変更しようとするときは,我が国の安全保障に関する情報の保護,行政機関等の保有する情報の公開,公文書等の管理に関し優れた識見を有する者の意見を聴かなければならない。

優れた識見者かどうかを判断するのは「安全保障」とやらに一枚噛んでいる政府が判断します,たぶんイエスマンだけで構成されます,しかも意見を「聴かなければならない。」のであって,反対されたとしても聴いただけでオールオッケーです本当にありがとうございました。

(第19条,第20条省略)

(この法律の解釈適用)
第21条 この法律の適用に当たっては,(中略)国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない。

配慮するなら作るなこんなもん。

2 取材行為については,専ら公益を図る目的を有し,(中略)正当な業務による行為とするものとする。

お前が決めんな。


【罰則】
第22条 特定秘密を漏らしたら10年以下の懲役だ。又は情状により10年以下の懲役及び1000万円以下の罰金に処する。覚悟しろ。他にも特定秘密をこの法律上知ったケースに応じて,5年以下の懲役とか未遂処罰規定とか用意している。いつでも来い。

特定秘密を取扱う人も大変ですね。

第22条2項以下
「特定秘密」を知ろうとし,人を唆したり騙したり,暴力ふるったり,盗みに入ったり,とにかく「特定秘密」に近づいた国民に対しては,10年以下の懲役等を用意した。

自分が知りたいなって思った情報にアクセスしようとしたら,それが「特定秘密」である場合がありますのでご注意下さい。





(今日のまとめ)
この法案が通ったら,このブログ主は逮捕されると思う。










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(追記)2013/11/27
一日ぶりですこんにちは。弁護士の渡部です。
前ブログを含め,長らく私の文章をご覧頂いている方はご存知だと思いますが,私の文章は読み直し無しの一気書きですので,誤字脱字や内容それ自体に誤りがあったりします。
まぁそういうのも含めて笑って読んでねというのがこのブログの趣旨なんですけど,なんかよく分かんないけど結構な数の人から「苦情って単語,法律でよく使われているよ」って指摘されています。
いやいや,そんなバカな,不服申立てとか控訴とかならまだしも,苦情って法律用語としてどうなの,使われているわけがな あれ?これ,使われているな。完全に使われているな。

例えば男女雇用機会均等法,労働者派遣法等,「苦情の処理を受けたらちゃんとしなさいよ」みたいに使われているな。
完全に私の勉強不足です申し訳ございません。
だって,まさか「国の安全保障」とか,言わば「対国家」「改憲的法案」であるこの法律で,国に対して苦情言っておしまいなんてあると思わなかったんだ。

取り上げているテーマがテーマなので,いつもより多くのご意見を頂戴しております。ご批判もお褒めの言葉も全部ひっくるめて,読んで頂きましてありがとうございます。
よし,次からはふざけたテーマにしよう。