2014年1月24日金曜日

書ききれねえよ。

なかなかこういうテンションにならないので,今日はおセンチな長文をもう1つ。渡部です。



以下,昔話なので,お時間ある方だけご覧下さい。




私は検察官になりたくて司法試験の勉強を始めました。

検察官になりたくなった理由はただ一つ。大学の授業で「起訴便宜主義」を勉強したからです。おぉ,検察官ってこんな権力持ってるんだ,おれも欲しい,と。

で,ものすごい天運により,司法試験に1回で合格(奇跡)。

まさか合格するとは思っていなかったので,弁護士事務所の就職活動もほぼしておりませんでした。検察官になる気まんまんだったし。


合格した年の11月,配属地である静岡県で修習を開始しました。

最初の2か月を,静岡の弁護士事務所で指導を受けました。前記事で書いた事務所です。

そして,ちょうどその頃,川崎のとある事務所の先生から,「お前面白いから遊びにおいで」と飲みに連れて行ってもらうことがありました。

後で分かったことなんですけど,これは「就職活動として人物を見られていた」ようで,そんなことを微塵も考えていなかったおれは,「わざわざタダ飯食わせてくれるなんて良い人がいるなぁ」と思っていました。そうです。私の元ボスです。

「明日,遊びにおいでって言われてるから,仕事早めにあがってもいいですか?」と指導担当に言うと,「おう,勝手に行って来い」と送り出してくれました。

「今度は源さん一人で遊びにおいで(当時は「さん付け」だった。)」と言われた日,ふと思いました。






この事務所,すげー楽しいな。


この人(元ボス)の感性,すげーな。


おれ,就職活動していないけど,検察官になれなかったらどうしよう。






一次会が終わり,二次会に行く道すがら,思い切って,「この事務所って,面接とかってやってませんか?おれ,申し込んでみたいんですけど。」って言ってみました。



「うちに入りたいの!?よし採用!」




とんでもねえ人だと思いました。おれはこの時点で履歴書も出していません。おれの身元確かめなくていいのかおい。本当に司法試験を合格したかどうかも確かめてねぇぞおい。どんだけ度量でけぇんだおい。いやいや,同じ事務所の先生方も拍手してるけど,こんなんで決めていいのか,大丈夫かおい。



「あ,ちなみに年俸の相談だけど…」



同期合格者は1851人いますが,路上で内定を言い渡された上,内定の後に諸条件を詰めた弁護士は私だけだと思います。



そして,このときに検察官志望であることを告げられなかったのが,私の人間としての醜さであり,今でも申し訳なかったと思っています。


翌日。



早速指導担当に内定をもらった旨報告しました。おれ自身はあまりに唐突だったので興奮して喋っていたんですけど,やはり指導担当は,それとなく「これは就職活動だな」と思っていたようで,

「そうか,良かったね。」(以上)

あっさり。


4月。



念願の検察修習が始まりました。

検察官は誰でもなれる訳ではなく,一定の能力と素質を教官に判断された人しかなれません。

私に素質があったかは分かりませんが,少なくとも,誰よりも熱心にアピールしていたと思いますし,指導側の検察官もそれを感じていたと思います。

検察庁にいた2か月はとてもディープで,正直ブログで書けないような武勇伝を数多く残し,その後数年間は静岡に爪痕が残ったと聞いております(いや,さすがに書けない。)。


5月頭。元ボスから,「GW遊びに来ない?」と誘われ,わーいわーいとノリノリでお寿司を食べに連れて行ってもらいました。

で,開口一番,

元ボス「源が検察官志望って聞いたんだけど…」

おれ「…(絶句)」


これが今でも語り継がれている「寿司屋事件」です。一部マスコミ(兄弁)では「源はあまりの衝撃に寿司を1つも食べることなく静岡に帰って行った。」と報道されていますが,寿司は食いました。おいしかったです。

この時点で,私は元ボスのことが大好きになっていましたので,絶対にウソをつくわけにはいかないと思い,全部話しました。

司法試験は検察官になるために始めたこと。

内定をもらったときはビックリして話せなかったこと。

でもこの事務所の仲間にしてもらえる評価をしてもらったことは本当に嬉しかったこと。

検察官は自分の夢であること。

全部話しました。



元ボスは,黙ってずっと聞いてました。



で,こう言いました。

おれは源に惚れて内定を出した。
源という人間を好きになって内定を出した。
だから,源には幸せになって欲しい。
源が幸せになれるなら検察官になるのも仕方ないと思う。
もちろん,うちに来て欲しい。
ただ,うちも人員戦略を考えて経営しているから,申し訳ないけど検察官の道を目指すなら,うちとしては早めに次の人間を捜さなければならない。
だから,早めに回答をもらえないだろうか。



帰りの新幹線で泣くよね,ここまで言われたら。仕方ないよね。



翌日。検察庁。夕方。

おれ「ちょっといいすか?」
検事「どうしたの?今明日の取調べの準備を…(おれの顔を見て,側にいた事務官に)ごめん,ちょっと1時間くらい席外してくれる?源,1時間くらいしか時間とれないけど,いい?」
おれ「いや,お仕事中だからまた今度でいいです。ありがとうございます。」
検事「いいから座れ。」


書いてて思ったけど,ドラマみたいだ。


おれ「…という訳なんです。」
検事「なるほど。で,お前はどうしたいんだ?」
おれ「正直悩んでいます。あの人(元ボス)はすげー人です。ただ,弁護士の仕事には疑問を持っています。仕事それ自体は検察官の方に魅力を感じています。だから,あの人と検察官の仕事のどっちをとるかで悩んでいるんだと思います。」
検事「なるほど…(無言)」



書いてて思ったけど,この検事どんだけ良い人なんだ。



検事「お前,なんで検察官になりたいの?」
おれ「被害者と被告人の両方にコミットできるからです。弁護士だったら被告人だけじゃないですか。それじゃ根本的な解決にならないんです。」
検事「どういうことだ?」
おれ「検察官だったら,被害者と被告人,両方のために仕事できるじゃないですか。」
検事「それは違うぞ。」
おれ「え?」
検事「検察官は何のために仕事をするか,分かるか?」
おれ「被害者と被告人のためです。」
検事「違う。『公益』のためだ。」





おれ,衝撃走る。





おれ「『公益』ってなんですか,そんな抽象的なもん,分かんないじゃないですか。おれ,K検事のこと大好きなんだから,そんな政治家みたいなこと言わないで下さいよ!(キレる)」
検事「そんなこと言われてもそうなんだから仕方ない。我々は公益のために仕事をしている。だからこそ,辛い決断をしなければならないこともある。」
おれ「よく分かんねえっす。でも金だけ求めるよりいいっす。」
検事「お前,金を稼ぐことが悪いことなのか?お前,なんか前からそういう発言してたな。」
おれ「悪くはないっすけど,なんか違うなって。事務所でかくして,金稼ぐだけならなんか違う仕事できるじゃん。」
検事「お前,事務所を大きくすることが下賎なことのような言い方をするな。いいか,事務所を大きくしないとできない仕事ってのがあるんだ。そのためにどれだけの苦労が必要か考えたことがあるか。いいか,弁護士の先生方はみんな経営の苦労をされながら仕事をされているんだ。お前は,考えが足りない。」



このK検事,すごい穏やかで,このときも怒鳴ること一切なかったんですけど,弁護士の悪口言った瞬間,目がキレてましたね,超怖かった。


結局結論は出ず,うなだれて検察庁を後にするの巻。





夜。弁護士事務所。

おれ「こんばんは。」
指導担当「あれ?今は他のとこで修習じゃなかったっけ。どうした。」
おれ「飯,食いませんか。」
指導担当「いや,仕事したいんだけど。」
おれ「相談があります。」
指導担当「何だよめんどくさい。いいよ。」


リアルで本当にめんどくさそうでした。


おれ「…と言う訳なんです。」
指導担当「ふーん。」
おれ「どう思います?」
指導担当「どっちでもいいんじゃない?」


本当にこう言いました。

いやいや,こっちは人生で初めて悩んでいるんだよ。今まで人生で悩みなんてないバカな人間だったけど,初めて悩んでんだよ。こういうとき,なんか良いこと言うのが指導担当的なアレじゃないの?なんかくれよプリーズ。

指導担当「よし,検察官になれ。」
おれ「なんで?」
指導担当「だって,弁護士になった後って検察官になれないじゃん。検察官になって嫌になったら弁護士になればいいんだよ。


このおっさんを殴ってやろうかと思いました。

なるほど,結構本気で考える気がないんだなということを感じとった私は,もう普通に食事とお酒を楽しむことにしてふてくされました。そんな私を見ながら,ガハハと酒飲んでました,指導担当。



そしたらさ,

指導担当「おい。」
おれ「なんすか(ふてくされながら)」
指導担当「さっき検察官の仕事は公益とかうんたらかんたら言ってたろ。」
おれ「言いましたよ(ウイスキーに夢中)」
指導担当「弁護士の仕事は何か,教えてやろうか。」
おれ「依頼者のためにやるんでしょ。」
指導担当「依頼者のために,何をやるんだ?」
おれ「弁護したり,書面作ったり…なんか,そんな感じ。」
指導担当「弁護士の仕事は2つだけだ。」
おれ「は?」
指導担当「『決断』することと,その決断に『責任』を負うこと,この2つだけだ。」
おれ「へ?」
指導担当「他は何もしなくていいぞ。この2つだけだ。弁護士になるんだったら,覚えておけ。」

これで終わりですよ。おれ,ぽかーんとしてたら「じゃあ仕事戻るわ」って事務所帰ってった。

弁護士になれって言わなかったなぁ…。

検事になれとも言われなかったなぁ…。

どっちからも誘われなかったなぁ…。

おれってどっちにも向いてないのかなぁ…。

人生で一番長い夜を過ごしました。











朝起きて,弁護士になろうと思いました。

不思議と迷いはありませんでした。

理由はいろいろあって,たぶん,元ボスからの評価が嬉しかったりとか,弁護修習が楽しかったとかいろいろ挙げられるんですけど,本当の決め手は,実は今でもよく分かりません。

でも,なんとなく,前の晩,指導担当が話していた弁護士の仕事っていうのが自分の中で理解できず,それが逆にやってみたいという動機になったとか,そんな感じだと思います。よく分かりません。

すぐに元ボスに報告したかったんですけど,筋は通さなければなりません。

朝一で指導担当検事の元へ向かい,検事志望を撤回したい旨伝えました。

検事は微笑みながら,「後悔しない?」と聞いてきましたが,「お願いします。」と答えました。

元ボスにすぐに報告したいので,教官に連絡を取ってくれないかと頼み,教官に繋いでもらって撤回する旨伝えました。

「君は一番早くから検察志望を名乗り出ていてくれたから,正直残念だ。」と言ってくれましたが,本心はどうなんですかね(ゲス顔)。

元ボスには,「ふつつかものですが」とすぐに電話しました。

それからの検察修習は楽しかったです。

もう二度と取調べをすることはないから。

もう二度「こちら側」に立つことはないから。

これが,人生で最後のおれの事件だから。

必死にやって,調書まいて,指導担当検事に決済お願いしたら,5文字だけ修正されて後全部採用されました。

実はその事件,私がマズい取調べを一度して,指導担当検事から怒られた事件だったので,正直決済が通ってほっとしました。

そしたら,指導担当検事が,

「源,N山(取調べでコンビを組んでいた同期),ちょっと来い。」

やだなにこれ超怖い。

これ完全に怒られるパターンだ,在宅とは言え2か月丸々かけて調べたからな,時間かかり過ぎちゃったかな。







検事「よくこの事件を落とした。」






あれ,あたし,褒められた?テヘペロ状態?よーし,ふざけちゃおっかな☆





おれ「やっぱおれって検事の才能あるんすかねー。こんなんだったら検事志望撤回しなければ良かったな☆(テヘペロ)」

周りが笑う中,





検事「全くだ。(真顔)」





トイレで泣いた。





時が経ち,二回試験も終わり,私は優秀な成績(たしか)で弁護士になることが決まり,仕事を始める前に,みんなで静岡の皆さんにお礼の挨拶を行くことにしました。

裁判所や検察庁の皆さんに挨拶した後,各自の弁護修習事務所へ挨拶。夜から有志で全体飲み会という流れ。

ホテルもとって,今日はしこたま飲むぞ!

さぁ,弁護士事務所へ向かうぞ!

以前,「合格したらなんか奢ってやる。」と言って,「エビがいいです。」と答えたら,「桜えびでいいか。」とか抜かしてたけど,どんなボケをかましてくれるのかなー。






なんだこの見たことも無い大きさの伊勢エビは。しかも2匹。




指導担当「まぁ飲め。」
おれ「いただきます。美味いっす。」
指導担当「今日は帰るのか?」
おれ「いや,今日は夕方から全体の飲み会を裁判所と検察庁がやってくれるんで,それ行こうと思ってます。」
指導担当「あぁ,なんかそんな話聞いたな。」
Iさん(事務員)「指導担当弁護士にもFAX来てましたよ,たしか。」
おれ「あ,でも弁護士の参加人数,すげー少ないと思いますよ。先生,そういう会合あんま出ないじゃないですか。大丈夫っすよ。」
指導担当「おれ,行こうかな。」
おれ「マジで?」



翌日はひょうでも降るんじゃないかと思いました。



全体の飲み会会場に2人で向かい,同期の連中が既にワイワイやってました。

我々2人は既にかなり酔っていたので,テンションも高めに行こうと。

お世話になったK検事がいました。

指導担当を一人にしておくのも少し気が引けたけど,他と楽しく話をしているし,

おれ「ちょっとK検事に挨拶してきますね。」
指導担当「うん。」

よし,とりあえずK検事に「渡部『先生』」と呼ばせよう。ふんふーん♪

おれ「お疲れさまです!」
K検事「(おれの顔を見て,微笑みながら)…お前は頑張ったなぁ…。」





おれ,何故か号泣。



嗚咽する程の号泣。



喋れない程の号泣。



隣の同期がもらい泣きする程の号泣。




それを見て何かを察し,数万円置いて「おれ帰るから,しっかりやれよ。じゃあな。」と言う指導担当弁護士。





その優しさを見て申し訳なくなってまた号泣。










修習中でさえ,この他にもいっぱい恩を受けているんです。

弁護士になって,元ボスにお使えして,あまつさえ独立させてもらって,独立後も仲良くさせてもらって,おれの人生,恩しか受けてないんすよ。

だからおれ,下に恩を返したいんすよ。

だからおれ,チューターやってるんすよ。




何だこの話。


ここまで読んで下さった方,ありがとうございました。

この業界は世知辛くなってきたと言われておりますが,私は絶対にそんな風にはさせないと誓っております。

そのためにはさ,ロースクール1期生のおれらがしっかりしないといけないんだ。



というわけで弁護士になりました。

紹興酒のグラスは一気飲み専用に見える。弁護士の渡部です。

昨日は,2013年度横浜弁護士会チューターの全体打ち上げ会が。横浜中華街で盛大に行われました。

明文の規定は無いのですが,このチューターは単年更新で最長2年が任期と言われておりまして,もちろん事前にその旨の説明を受けた私は,2012年度に続き,2013年度もチューターをやらせて頂き,これにてお役御免となり,後は後進の成長をのんびり眺めるだけになりました。

と思ったら,「2014年度もやれ」というよく分からない日本語で書かれた選任通知が来たので,昨日の打ち上げ会で副委員長(大御所)にマジで結構本気で直訴するという強攻策に出たけど却下されました。

こうなったら仕方が無い,逆に選任通知を向こうから取下げさせる方向に持って行くしかないと判断した私は,他の人が壇上で真面目なスピーチをしている真後ろで,紹興酒片手に,EXILEのチューチュートレインを踊りだす(ギャラリーは100名以上)という自殺行為を敢行しました。

ところが,何が気に入ったのか,横浜弁護士会会長が壇上に上がってきておれに紹興酒を笑顔で注ぎ足していいぞ飲め飲めみたいなことやってきたもんだから,結局「なんか変わった人がいる」ていう感じで終わりました。




というわけで2014年もチューターです。

ところでこのチューター制度,私だけではないと思うんですけど,チューターやっている方からすると,「ほんとにこの方向でやっていて大丈夫かしら」と思うことがしばしばあります。

と言いますのは,この業界(法曹業界),ものすごい縦社会制なところがありまして,「上は下の面倒を見るものだ」「上から受けた恩は上に返さなくていい,下に返せ」という慣習が根強くあり,私も新人時代はすごい面倒みてもらいました(但しおれ自身は今も新人だと思っているから誰か奢って下さい。)。

ところが,私がチューターをやるようになったからでしょうか,キツイ言い方をすれば,「なんか物足りない」と思う子が増えてきている気がします(全員じゃないよ。)

すごい頑張っているのは分かるんです。修習が貸与制に変わり,弁護士増員に伴う業界不況等の不安の中,一生懸命仕事をして営業活動を行っている,そういう新人の皆さんがいっぱいいます。

「最近の新人は貸与制に変わり,逆に激しい危機感の中仕事をしており,むしろ意識レベルは高い」と評価している先生方は多くいます。むしろそっちの方が多数派なのかしら。

でも,うーん,なんか違う,と思うことがよくあります。



これからとある「怪物」の話をします。

司法試験に合格すると,1年間,「修習」と言って,裁判所や検察庁,弁護士事務所に研修に行きます。

私の場合,静岡のとある事務所でお世話になりました。

「怪物」とは,そのときの指導担当弁護士のことです。

なぜ「怪物」と表現しているかというと,私は人生であのお方程「豪快」な人間を見たことがないからです。

例を挙げればキリが無いのですが,

  • 「働かざる者食うべからず。修習生だろうが容赦はしない,『勉強』ではなく『仕事』をしてもらう。」(普通は修習生に弁護士と同レベルの起案を求めない。)
  • 「なんのためにお前の机に電話があると思っているんだ。書証が欲しければ自分でお客さんに電話をするんだな。」(普通は修習生に自分のお客さんを接触させない。)
  • 「今日のお前は良い『仕事』をした。だからこの皿の肉を全て食べる義務がある。」(この後食い過ぎて吐いた。)
  • 「殴られたらチャンスだと思え。被害届の書き方は簡単だ。」(生々し過ぎる経験談)

という数々の名言を残された現役バリバリの弁護士です。今確認したらもうすぐ弁護士キャリア30年ぐらいの方だと思います。

名言も去ることながら,

  • 事務所のボスなのに朝6時に出勤している。
  • 「ちょっと付き合え」と言い,午前様になるものの,「お前,明日は昼から来ればいいから。」と優しいお言葉。
  • それでも一応午前9時に出勤したら,朝8時の時点で既にボスは働いていた。
  • 裁判所に行くなど,町に出ると知らない人から必ず挨拶をされる。
  • 「ちょっとエビが食べたい」と言い出し,港に車を走らせ漁師と交渉。

という行動力のある方でした。

で,私,この方のことを非常に尊敬しておりまして,今でもお中元お歳暮欠かさず送っているんですけど,私がこの方から一番感銘を受けたのは,「人間関係は損得勘定を抜きにして考えろ。」ということです。

この方も,他士業の先生方と交流を持たれたり,地域活動をするうんたらかんたらとか活動されていて,私自身,実際そのパイプから事件を受任している姿を見ているので,「結局得になる人脈構築を狙ってんじゃねーか。」と,本心では思っていました。


ある日,「付き合え」と言われたので,いつも通りご飯を食べて,その後どこに行くのかな(事務所に戻って一緒に仕事をするパターンもあった。)と思っていたら,その日はすごい落ち着いたバーに連れて行ってもらいました。ジャズが流れる,年配の佇まいが美しいママさんが一人で切り盛りしているバーです。

で,その先生は,プリン体の関係からビール飲み過ぎると危ない注意報が発令されていたので,ずっとウイスキー飲まれていましたので,おれも合わせて飲んでいたら,さすが酒豪,先に私がダウンしました。

「ちょっとトイレ行ってきます。」と言って吐き,気持ちをリセットして席に戻ろうとしたら,おれの席に知らないおっさんが座ってました。

おれ「おっさん,そこはおれの席でそれはおれのウイスキーだ。(当時26歳,酒乱。)」
おっさん「あぁ,お兄さん,ごめんよ。」
指導担当「いいからお前はこっち側座れ。」
おっさん「いや,いいよ,お兄さんの言うことは正しいから,私がそっちに行くよ。」

私は指導担当と2人で話すのが好きだったので,正直なんだこのおっさんと思いましたが,「ひょっとしたら先生のお客様かも…!」と焦りました。

しばらく2人で話されていたのですが,どうやらこのおっさん,地元で有名な(おれも聞いたことある)会社の社長さんだったようで,仕事がどーたらこーたらとか話してました。

しばらくしたら,4人組ぐらいのお客さんが来て,指導担当に「あ!◯◯先生」と声をかけられていました。

で,その4人組が「あ!△△さん!今日は◯◯先生と一緒なの?」と気がついたようです。

なるほど,指導担当とおっさんはあまり見ないセットだったんだな,と思いながらママの年齢当てクイズを一人でやってたんですけど,おっさんが,「ちょっとあっちに顔出してきますね。」と言って,4人組のテーブルに移って行きました。

おれ「すいません,なんかさっき先生のお客様に失礼な口を聞いてしまって。」
指導担当「あぁ,気にするな,いいよ。」
おれ「でも,地元で仕事していると,お客様とばったりプライベートで会うこともあるんですね。」
指導担当「そうだな。多いな。」
おれ「あのおっさんはどういう繋がりなんです?」
指導担当「ない。」
おれ「は?」
指導担当「繋がりなんて無いよ。」
おれ「は?おれがトイレ行っている間になんか2人で話していたじゃないですか。」
指導担当「なんとなく,この人面白そうだなと思って声かけた。初対面だ。
おれ「あんたバカか(原文ママ)」
指導担当「でも,お前が席を譲れみたいなことを言ったとき,あの人笑って譲ったろ?酔っていたこともあるかもしれないけど,そういう人なんだろうなと思ったんだよ。面白いだろ?おれの目は間違っていなかっただろ?」
おれ「変な人でめんどくさかったらどうするんすか。」
指導担当「それはそのとき考えればいいんだよ。」
おれ「いつもこういう風に声かけてるんですか?」
指導担当「そんなことないよ。気が向いたとき。」
おれ「仕事に繋がるかもしれないから?」
指導担当「(笑って)それもあるな。だけど,まぁ,おれの趣味みたいなもんだ。」

で,聞いてみました。

おれ「正直,先生の事務所,儲かってるじゃないすか。」
指導担当「他は知らんが,まぁそうかな。」
おれ「他の先生方もそうだけど,先生自身がすげー働いてるじゃないですか。」
指導担当「働いているから稼いでんだよ,おれは。会務をやる奴らに申し訳ないけどな。」
おれ「先生,もうすぐ還暦じゃないですか。」
指導担当「知らねーよ(笑)そうだっけ。」
おれ「正直,『もういいや』って気持ちにならないんすか?金はもうあるじゃないですか。」

指導担当が,笑顔から真顔になりました。(恥ずかしいけど以下原文ほぼママ)

指導担当「お前は今,いくつになった?」
おれ「26です。」
指導担当「おれが司法試験受かるのに時間がかかった話はしたか?」
おれ「聞きました。」
指導担当「10年かかったよ。貧乏だったし,本当に辛かった。」
おれ「…。」
指導担当「今の事務所もな,最初はおれ一人で,4畳半のスペースでやってたんだぞ。」
おれ「でもでかい事務所になったじゃないですか。修習生用の電話がある事務所なんて聞きませんよ。」
指導担当「お前,前に,会務あまりやらないことに対して,おれに意見言ってたよな。」
おれ「はい。」
指導担当「おれは金が無いときの辛さを知っているからな。だけど仕事をしているのは金が理由じゃないぞ。」
おれ「じゃあなんなんすか。」
指導担当「楽しいからだ。おれは10年かかって弁護士になった。『働き盛り』と言われている年代を受験勉強で潰したのは本当に悔しかった。だから,弁護士になったとき,本当に楽しいことだけしようと決めた。おれは無理をして仕事をしているのではなくて,楽しいから仕事をしているんだ。」
おれ「よくわかんねっす。」
指導担当「いいか,お前は弁護士になったら,商工会議所とかに必ず入れ。」
おれ「おれ検察官になるから関係ないっす。」
指導担当「いいから聞け。さっきの△△さんもそうだ。お前のことを褒めていた。この間の社長さんも,お前のことを弁護士だって認識してないからか,『お宅に活きが良い若いのが入りましたね。』と評価していた。入ってないけどな。でもな,お前はよく分かんないけど人を惹き付けるなにかがあるんだわ。お前が検察官になろうが興味は無いが,お前は営業に向いている。」
おれ「おれ人見知りだって知ってるじゃないですか。無理すよ。」
指導担当「この仕事してると,感じるんだよ,あぁ,この人は『ある』なっていうのが。お前はなんか違うものが見えてんだよたぶん。損得勘定抜きにもの言うだろ,お前。」
おれ「ムカついたらソッコーキレます。」
指導担当「いいか,おれが会合とか出て仕事を引っ張って来るのは,おれが金のために会合に出ているわけじゃないからだ。憧れた弁護士として活動するのが楽しいからやってんだ。もちろん,会合には仕事狙いで来るやつが大半だ。だが,不思議とおれの方に来る。分かるか?」
おれ「分からん。」
指導担当「最後は『人柄』なんだよ。『人柄』で頼みたくなるんだよ。弁護士としての営業活動はきちんとしろ。でも,お前は変わんなくていいよ。」
おれ「変わらん。だから検察官になる。」
指導担当「検察官なんてやめちまえ(笑)弁護士の方が楽しいぞ。」
おれ「うるせーよ。」


なんか泣きそうになってきた。










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2014年1月8日水曜日

今年こそ読みやすい文章を書こうと思ったけどダメだった。

よし,離婚協議書を書き過ぎた,一息つこう。弁護士の渡部です。

新年になりましたね。皆様今年も宜しくお願い申し上げます。

で,新年早々,私が勤務しております川崎において,検察庁から被疑者が逃亡するという事態が発生し,町も何やら騒がしいことになっております。

私は事件の概要を何も知らないので,全くコメントする立場にございませんが,一弁護士として,誰も怪我することなく,彼が公正な裁判を受けられる状態になることを切に願っております。


(この流れから川崎の逃亡事件に関する記事を期待している人は,そろそろ回れ右した方がいいです。いつもの奴を見たいというお暇な方だけどうぞ。)


私も川崎で仕事をしてもう6年だかなんだかになりますが,神奈川県警さんは本気を出していますね,こんなバタバタした川崎は初めてです。

今も上空にヘリが飛んでおります。基地付近にお住まいの方は「ヘリがどうした」かもしれませんが,ヘリ慣れしていないとそわそわしますね,これ。

マスコミの皆さんも大変ですね。「こちら現場です!被疑者はあちらの東京方面に逃走したものと思われ…(走りながら)」みたいなやつを生で初めて見ました。

あれ,練習しているんですね。法務局(検察庁と同じ建物)の行き帰りで同じ人が同じことやってました。何回も練習していました。「中継の◯◯さん!」と呼ばれたときに失敗しないように練習しているんですね。臨場感を出すためにたゆまぬ努力をされているのだなぁと思って見てました。

そう,今回の検察庁の建物って,下の階に法務局が入っている合同庁舎なんですよ。建物の入り口は一緒なので,テレビに映っているあの入り口は,日常的に法務局使う一般の人達も出入りするわけです。

で,今日あたりからすごい気になっていることがあるんですよ。誰も指摘しないんで,ひょっとしたらおれがなんか間違っているのかなとか思っているんですが,思い切って調べてみようと思いました。

まずはこちらをご覧下さい。



















今日の横浜地方検察庁川崎支部(法務局)の前の様子です。人の顔や車のナンバーにぼかしを入れております。

この時点で私がすごい気になっていることが分かった方はこの後の文章を読んで下さい。分からない方はこういう書き方するとなんかハードルが高くなっている気が自分でもしてきたので回れ右して下さい。

で,私が気になっている部分を拡大してみました。



















伝わらなかった人はこれ以上読んでも時間の無駄なので回れ右して下さい。

警視庁も,このマークのところは駐車しちゃいけませんよと言っています。
【違法駐車追放対策|警視庁】
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kotu/chusya/cihan.htm

私がすごい気になっていることは,「警察もめちゃくちゃ出入りしている検察庁の目の前でなぜ違法駐車するんだ,怖くないのかあなた達は」ということです。

川崎に全く馴染みのない方に説明致しますと,この通りは官公庁や郵便局が立ち並び,川崎駅に向かう交通量の多い道路で,非常に高い確率で違反切符を切られる地元では有名な場所です。ここでは誰も神奈川県警にかなわないのです(管轄は川崎警察署。)。

なんでだろう,なんで捕まらないんだろうと思い,道交法ってどうなっているのかなと思ったんですけど,免許を取得してからまともに道交法を勉強した記憶がないので,記憶喚起のために調べてみました。

【ステップ①〜この場所は結局なんなのか〜】

(駐車を禁止する場所)
第四十五条  車両は、道路標識等により駐車が禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、駐車してはならない。ただし、公安委員会の定めるところにより警察署長の許可を受けたときは、この限りでない。
(中略)
  車両は、第四十七条第二項又は第三項の規定により駐車する場合に当該車両の右側の道路上に三・五メートル(道路標識等により距離が指定されているときは、その距離)以上の余地がないこととなる場所においては、駐車してはならない。ただし、貨物の積卸しを行なう場合で運転者がその車両を離れないとき、若しくは運転者がその車両を離れたが直ちに運転に従事することができる状態にあるとき、又は傷病者の救護のためやむを得ないときは、この限りでない。
  公安委員会が交通がひんぱんでないと認めて指定した区域においては、前項本文の規定は、適用しない。

第1項において,道路標識等により駐車が禁止されている道路の部分」に駐車をしてはいけない,ということが定められています。なお,ついでに言うと,道路標識を地面に突き刺す法的根拠は第4条(公安委員会の交通規制)です。

そうすると,この写真にある道路標識はどう考えても駐車禁止標識なので,神奈川県警が間違ってこの標識をアスファルトに突き刺していない限りは第1項適用事案になります。

第2項及び第3項は関係ありません。第3項が「適用しない。」としているのは「前項(第2項)本文」(共に下線部分)なので,第1項は第3項の影響も受けません。

じゃあこの写真に写っている車は駐車してんのかどうか,というのが次に問題になります。


【ステップ②〜この車なんなのか〜】


とりあえずこの写真の車のテールランプを見て下さい。赤く点灯していません。何なら車両前方に人もいます。車間距離も以上に狭いですね?そう,この車達は物理的に停止(以下「本件停止行為」という。)しています。

運転手さんは乗っているかどうかはここからでは分かりませんし,私も確認はしませんでした。

【ステップ③〜道交法はどうなっているのか〜】

さて,道交法上,車両が物理的に停止している状態は2つの場合が想定されています。「駐車」と「停車」です。

本件標識は「駐車禁止」なので,本件停止行為が「停車」に該当していれば,おまわりさんにごめんなさいしなくても済みます。駐車ならお金を納めることになります。では,駐車から見てみましょう。

(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(中略)
十八  駐車 車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること(貨物の積卸しのための停止で五分を超えない時間内のもの及び人の乗降のための停止を除く。)、又は車両等が停止し、かつ、当該車両等の運転をする者(以下「運転者」という。)がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態にあることをいう。


非常にわかりにくいので分解しましょう。公用文の読み方の話を始めるとマニアックすぎるので省略しますが,この条文は前段と後段に別れます。

(A)車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること(貨物の積卸しのための停止で五分を超えない時間内のもの及び人の乗降のための停止を除く。)

(B)車両等が停止し、かつ、当該車両等の運転をする者(以下「運転者」という。)がその車両等を離れて直ちに運転することができない状態にあること

駐車には2つの種類があります。1つが(A)継続的停止,もう1つが(B)みなし駐車です。

(A)継続的停止
もう条文を読んでそのままの意味です。客待ち等の例示がなされていますが,「その他の理由」という抽象的概念でほぼ全ての目的が包括されるので,最終的には「継続的に停止するつもりがあったかどうか」にかかってきます。
ここでご注意頂きたいのが,継続的か否かは,単に時間の長短によるものではない,ということです。
【東京法令出版・執務資料道路交通法解説】によれば,「停止時間の長短,継続的停止の意志の存在によって,それが『継続的停止』に当たるかどうかを判断しなければならないと考える。」
つまり,「結果として5分未満の停止だったけど,社会通念上継続的に停め続ける気があったな貴様」と判断される場合には,停車ではなく駐車になります。

(B)みなし駐車
上記継続的停止に該当しなくても(継続的な停止の意志が立証できなくても),状況的にこれもう駐車だよね,という停止を駐車と看做(みな)す条項です。
これは「車両が停止していること」と「運転者がその車両等を離れて直ちに運転できない状態にあること」の2要件をクリアする必要があります。
例えば,駐車禁止区域でも,車を停め,ちょっと降りて一服してすぐ出発するつもりであるならばこのみなし駐車ではなく停車に当たります(その立証の難易はさておき)。
また,運転者が車を離れていなければこのみなし駐車には当たりません。
逆に言えば,「すぐに戻ってくるつもり(継続的停止の意志がない)だったけど,車からすごい離れたところまで行っていたから直ちに運転できる状態になかったよ」という場合は本号に該当します。


そろそろ飽きてきた読者を他所に,次は「停車」です。
(同条)
十九  停車 車両等が停止することで駐車以外のものをいう。

車が物理的に停止しているけど,上記(A)(B)どちらの駐車にも当たらない場合が停車になります。細かく言うと更に長くなりますので割愛します。


【ステップファイナル〜あてはめ〜】

まず車は停止しています。

停止の目的は,おそらく,「地検前でしばらく張り込んで取材したい」です。

「しばらく張り込んで取材」するために本件停止行為を行うということは,社会通念上どう考えても継続的に停止するに決まっていますし,ていうか何時間停めてんだこれ。

継続的に停止するということは道交法上の「駐車」行為に該当し,第45条1項により,駐車してはいけないということになります。ただし、公安委員会の定めるところにより警察署長の許可を受けたときは、この限りでないですが,そんな許可出したんですか署長!





なんか今回もよく分からないこと書いたんですけど,何が言いたいかって,別に法律をガチガチに当てはめて取り締まれとは言わないけど,ちょっとそろそろ邪魔なんだ,こっちもそこを仕事で使うんでな,ということです。


あと,各マスコミが逃走経路割り出し始めているんですが,その逃走経路には結構コインパーキングあるからそっちに停めてくれないかな,おれ車族でこの道すごい使うんだわ,ということです。



よし!なんかパトカーがサイレン鳴らしてるけど仕事するぞ☆









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