2014年6月30日月曜日

書くなら今日しかねぇ!首相とクーデターと内乱罪。

得意技はブログの放置。こんにちは。完全不定期更新ブログです。


3日前(6月27日),こんな記事が出ていました。
【解釈改憲は“クーデター”…安倍首相を米紙が批判 国民投票で改憲問うべきと提言|ニュースフィア】
http://newsphere.jp/politics/20140627-2/
(一部抜粋)
 米外交専門誌『フォーリン・ポリシー』の論説は、安倍首相が、憲法第96条によって定められた憲法改正の手続きを踏まず、再解釈という方法で、このような大きな変革を行おうとしていることを強く非難する。記事によると、これは憲法に反した手法であり、「憲法のクーデター」だという。安倍首相は「不正を働く」人物だとしている。
(以上抜粋)

さらに一部抜粋。
 安倍首相がこれほどまでに急いで事を進める理由を、『ウォール・ストリート・ジャーナル』が分析している。一つには、「アベノミクス」が国民から強力な支持を得たために、内閣の支持率が高く、いまなら自由に政策を推し進められる余地があることだ。


今のところアベノミクスの恩恵的なものは,ぼくのところに全く届いていなくて,逆に消費税8%ってどういうことだと思っているぐらいなんですけど,要するに,この記事の言わんとするところをまとめると,

「アベノミクスで調子に乗ったから自由に憲法いじくろうとしている。これはクーデターだ。」

ということのようです。


バカな!クーデターっていうのは,普通反体制の人間が行うものだろうが!なんで一国のトップがクーデターをするんだ!


と思っていたら,今日,こんなニュースを見ました。
【解釈変更,内閣の裁量? 正当化根拠に憲法65条:朝日デジタル】
http://www.asahi.com/articles/ASG6Y4SV2G6YUTFK005.html
(一部抜粋)
 「最高の責任者は私だ。私たちは選挙で国民の審判を受ける」。つまり、選挙で選ばれた与党の内閣が憲法解釈を行うのは当然で、その責任者は私だ――という論法だ。だが内閣による憲法解釈については、橋本内閣の村岡兼造官房長官(当時)が1998年、安倍首相とは異なる政府の見解を国会で示している。
 村岡氏は「行政府も権限の行使にあたって、憲法を適正に解釈していくことは当然必要」としつつ、憲法99条の「大臣や議員、公務員の憲法尊重擁護義務」が前提になると述べた。
(以上抜粋)

要するに,

「憲法99条で憲法尊重擁護義務を持っているはずの人間が,『行政権は,内閣に属する』という行政権の帰属の問題を謳っただけの憲法65条を根拠に,憲法を無視しようとしている。」

ということらしいです。



しかも,明日(7月1日),例の閣議決定をやるらしいです。



書くなら今日しかねぇ!!



いつもの10倍の前置きでした。弁護士の渡部です。

今日はぼくと一緒に刑法の勉強をしていきましょう。

このブログは弁護士さんとか法曹関係者も見ているそうなので,「今更刑法かよ。」という方もいらっしゃるでしょう。

ただ,今日はちょっと毛色が違います。絶対あなた達(ぼくも含めて)がよく分かっていない刑法の条文をいじくります。

一般の方からすると衝撃かもしれませんが,司法試験の科目にもなっている刑法ですが,実は,まず間違いなく論文試験で出ないだろう(実務で使う頻度が低いだろう)という箇所がございまして,たいていの弁護士はこの箇所は分かっていません。

今日取扱うブツは,何を隠そうぼくもさっぱり理解していません。

それでは今日取扱うブツは,こちら!

刑法第77条 内乱罪
 国の統治機構を破壊し,又はその領土において国権を排除して権力を行使し,その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は,内乱の罪とし,次の区別に従って処断する。



今日は内乱罪です!



アメリカさんの雑誌に,「ミスター安倍はクーデター野郎」と罵られた日本国民の1人であるぼくは,今,日本で本当にクーデターが起こっているのか,法的に考えてみることにしました。

内乱罪が成立するためには,「内乱罪の構成要件に該当し」,「違法性を有し,」,「ミスター安倍に責任能力があること」が必要です。

とりあえず一国の首相が責任能力がないという事態だけは,いくらぼくでも信じたくない気持ちでいっぱいなので,責任能力ありの前提で話を進めます。

まずは構成要件該当性(刑法77条にあたるか)から見て行きましょう。

内乱罪の構成要件は次のとおりです。

①国の統治機構を破壊し,(中略)その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として

内乱罪は「目的犯」と言われておりまして,この目的を欠くと内乱罪は成立しません。

「国の統治機構を破壊し」から「その他」までは例示規定と言われておりまして,要するに「憲法の定める統治の基本秩序を壊乱する」,すなわち「日本国憲法に基づく国家の政治的基本組織を不法に破壊すること(「条解刑法第3版・弘文堂」)」を目的としなければなりません。

なお,「国の統治機構を破壊」というのは,議会制民主主義の下で議院内閣制の破壊を意味するのであり,個々の内閣打倒や更迭はこれにあたりません。

逆に,議院内閣制そのものを破壊した場合にはこれにあたります。

議院内閣制はいわゆる三権分立の一環で,簡単に言えば「国権の最高機関」である国会と連帯して責任を持って内閣に行政権を行使させる制度です。

本件被疑者ミスター安倍は,行政権が内閣に帰属するということだけを定めたに過ぎない憲法65条を根拠に,「国民の支持を得ているからその最高責任者として憲法の中身を判断して当然だ!」という司法権やら「最高機関」である国会も無視しつつ,三権分立やら憲法99条の公務員の憲法遵守義務を全て無視したスーパーハイテンション理論を唱え出しました。

これがまかり通った場合,完全に国の統治機構が破壊されるので,①はクリアーです。書いているぼくがビックリするぐらいクリアーしてました。


②主体

内乱罪は憲法の定める統治の基本秩序の壊乱という目的を遂げるにふさわしい多数者の存在が必要と言われています。

これをまかり通そうとしているのはミスター安倍だけじゃなかったということに気がついたので,②も軽くクリアーです。


③暴動をした

暴動はしていません!セーフ!

なお,暴動とは,多数人が結合して暴行・脅迫を内容とする行動を行うことであり,憲法の定める統治の基本秩序の壊乱という目的を実現する可能性を有する組織的集団規模を有することが必要と言われています(前記「条解刑法第3版」より)。

例えば,ミスター安倍に愛想が尽きた人達のデモ(適法)に対し,組織的集団規模を有する目的で前記デモを鎮圧しようという場合には,③をクリアーする危険性があるというのが私の個人的な見解です。





というわけで,分析した結果,アメリカさんの雑誌さんが言うような「クーデター」は,ぼくが検討した限りではまだ成立していないようです。

まぁ法的な意味じゃなくても「クーデター」って使うことありますから,きちんと記事の内容を読んでみたら,「あぁ,そうかもな」と納得する部分もあると思います。

ただ,ぼくが1つ言えることは,今の日本はかなり異常な方向に突っ走っていると思います。

普段政治に興味がないぼくでもそう思うんだから余程の事態です。

W杯見てたら大変なことになっている。



注意:本記事は筆者の個人的な見解です。ミスター安倍に対して何かを攻撃する意図はありません。ただ,刑法が想定する内乱罪に近く,しかもそれ以上の何かをあなたはしようとしていますよということだけを発信したく,筆をとった次第です。気がついて欲しい。










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